- 農業機械メンテナンスナビ>防錆処理の方法>シャーシブラックの塗り方
- 自動車等の車体の裏側。足回り等のシャーシには黒い塗装(シャーシブラック・シャーシコートブラック)により防さび塗装がされています。大型の農業機械でも車同様にシャーシブラックにて防さびがなされているため、塗装により防錆を行います。
本ページは農業機械の紹介ですが、基本的には車での塗り方も同じです。車では、フードカバー等塗ってはいけない個所が多いため、より慎重に塗装を行います。・シャーシブラックの種類
市販されているシャーシブラックには油性と水性があります。それぞれ特徴があるため、自身の技術や作業環境を考慮して選びます。
・油性の特徴
・剥がれにくく、耐衝撃性に優れる。しかし、誤った個所(可動部)に塗った場合でも剥がれにくことで影響が大きい。
・乾きが早く、作業効率に優れる。(乾きが早いため斑になりやすい)
・有機溶剤のため、吸入すると体に良くない。
・水性の特徴
・油性と比較すると耐久性が低く、剥がれやすい。このため、飛散等で可動部に付着しても、可動することにより剥がれるため影響が小さい。
・光沢があり見た目がきれいに仕上がる。
・安全に作業ができる。
・塗装箇所
シャーシブラックは、可動部やゴム等に使用できません。元々されていた防錆塗装個所を目安に、塗装を行います。
特に車では、シャーシブラックが塗られている個所のみを慎重に塗装します。
塗装できない主な個所
・シャフトのジョイント部
・ボルト等のネジ
・ゴムフード、樹脂パーツ
・必要機材
・シャーシブラック(シャーシコートブラック) 300~800円程度
・洗車用ブラシ
・金属ブラシ
・高圧洗浄機(あると便利)
・パーツクリーナ(無くても良い)
・マスキングテープ(新聞紙とセロハンテープで可)
シャーシブラックの塗り方
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・資機材
・新聞紙とセロハンテープ(マスキング用)
・マスク
・錆取りブラシ・金属ブラシ
・シャーシコートブラック(油性)
この他、作業を行いやすいようにアルミブリッジ・寝台(クリーパ)を使用します。
作業前に高圧洗浄機や、洗車用ブラシ等で車両の汚れを落とし、完全に乾かして作業を行います。 -
・塗装前のシャーシ
20年間防錆塗装をしていない農機具の足回りです。
塗装が剥げた個所から錆びが発生しています。 -
・錆びとり
塗装の付着を良くする。塗装の下で錆が広がるのを予防するため、金属ブラシで錆を取ります。錆が広範囲となる場合で作業が困難(きりがない)な時には適度に加減して粗々と錆を取ります。
油分による汚れがある場合は、ページ最下部を参照。 -
・マスキング
塗装しない個所(可動部・樹脂・ゴム等)を新聞紙等で覆ってマスキングします。
写真では車軸の可動部(スピンドルケース)やタイヤを覆っています。
特にシャーシブラックが油性の場合、飛散した僅かな塗料でも影響が長期に残ります。作業に自信がない場合には水生の使用がおすすめです。 -
・シャーシブラックの塗装
20~30cm程度離してスプレーをします。
マスキングしていないボルト等ネジがある場合、ボルトにかからないよう注意します。
ボルトにかかると修理の時、ボルトが外れなくなります。しかし、外さない個所なら気にせず塗装してもさほど支障ありません。
錆等の腐食が特に激しい個所は、十分乾いてから重ね塗りを行います。 -
・塗装後のシャーシ
腐食箇所が除去され、塗装しなおされたことにより見た目にもきれいになりました。
この他、ジョイント部を除くシャフト本体。デフ等の車軸。車体を支えるシャーシ全体を塗装します。 -
この他の塗装箇所
・車体部(塗装前)
農業機械のタイヤハウスや車体周りです。傷による塗装の剥げと錆が発生しています。 -
・車体部(塗装後)
上記の錆取りを行った後、シャーシブラックで塗装しました。錆・傷ともに目立たなくなり、合わせて防錆処理も完了しました。 -
・タイロッド部
ハンドルを前輪に伝達するタイロッドエンド等です。ロッド部分はシャーシブラックで塗装できますが、前後の可動部分には塗ることが出来ないため、注意が必要です。
写真では、マスキングが面倒なためグリーススプレーで防錆をしています。 -
・動力シャフト部
前輪・後輪に動力を伝達するためのシャフト部です。
ジョイント部に塗装がかからないよう注意が必要です。 -
・ラジエータスクリーン
トラクター等のラジエータに使用されているラジエータスクリーン(防虫網)です。
錆による腐食が発生した場合、錆取りをした後塗装します。
・この他
紹介に使用した農業機械の錆は酷い状況ですが、シャーシ部分以外の可動部等の錆の腐食により影響がある個所はグリスによるの防錆処置がなされています。シャーシは、塩害等により特別に錆びる環境でない限り多少放置して錆びても実用には支障が発生しません。
今回塗装した機械は、20年でこの状況です。むしろ20年経過してもこの程度。実用上の支障はありません。
・脱脂作業
塗装する箇所のグリス等の脂分がある場合、パーツクリーナを使用して脱脂します。注意!グリスが塗られている個所は、通常は可動部であり塗装を実施してはいけない個所です。自身で防錆のために塗装が剥がれた箇所等の金属面にグリスを塗っている場合のみ、パーツクリーナーで脱脂をします。
多くの場合で、脱脂は必要ありません。むしろ脱脂はトラブルの元となるため注意が必要です。
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