- 農業機械メンテナンスナビ>単管パイプの利用とメンテナンス方法>単管杭(杭打ち)の錆止め
- 単管パイプを土に打ち込むと、手軽に大きな安定を得ることが出来る反面、地中や地表の境界部分が特に錆びやすくなります。杭打ちする単管の防錆では、錆びやすい部分の防錆を重ねるか防錆皮膜を傷つけないように支柱を立てることで寿命を大きく延ばすことが出来ます。また、専用の単管杭を使用するだけでも寿命が大きく伸びます。
単管杭の種類
杭打ちに用いる単管では、
・通常の単管に打込み先端(約200円)と打込座金(約200円)を組合せた物
・単管杭と呼ばれる先端が尖り、打撃部が座面となった1本物(1mもので約1,600円)
の主に2種類あります。
専用の単管杭は価格が割高ですが打込による打撃に備え構造が肉厚。打込み時の土等との擦れによる防錆皮膜の傷つきや錆び易さが考慮され防錆皮膜が厚い。密閉され内部に水が入らない(くい丸)など、製品により多少の違いがありますが何れも通常の単管パイプより錆び難いものとなっています。
このため、錆防止の観点では杭打ちに用いる単管パイプは専用の単管杭を用いるだけでも耐久性が向上します。
単管杭の錆を予防する施工方法
杭打ち等により地中に入った単管は、地中の浅い部分(地中15cm程~地表部分)と、地表の境界部分(地表~地上10cm程度)が特に錆び易くなります。
このため、単管杭の錆予防では地中の浅い部分から地表の境界部分(地上から高さ15cm程まで)までを特に錆びないように施工します。
錆びない施工
1.コンクリートで固める
長期(数十年単位)で用したい場合、コンクリートで単管パイプ(単管杭)を固めます。単管は基本的にコンクリートに覆われると、コンクリートのアルカリ分により錆が発生しません。
予め土地に穴をあけ、単管パイプ(単管杭)を立てコンクリートを流し込み固める。この時、地表部分に型枠を組む等して地上高さ10cm程度まで行うとより大きな防錆を効果を得ることが出来ます。
実際に行うと杭1か所当りコンクリートで10~20kg(インスタントコンクリートで約1,500円分)程度必要となります。
全てコンクリートで行う方法のほか、コンクリートブロック(約200円)や単管タイプ用の沓石(約2,000円)や束石(約700円)を使用して単管パイプを立て、その隙間にコンクリートを流しこみ固めると比較的簡単に施工できます。専用の沓石や束石を使用した方が施工時に単管が自立し作業し易いです。しかし、安価なコンクリートブロックの穴は単管に対して大きいため、作業時に自立しない反面コンクリートを流し込み易く、コンクリートによる防錆の効果を得やすいです。
コンクリート等の資材で1か所辺り1,000円~の費用が必要となります。
2.穴を掘って埋める
穴掘り機(エンジンオーガー、ハンドオーガ)等を使用して、予め穴を掘り単管杭を立てて埋め戻します。杭打ちを行わないことで、表面の防錆皮膜が傷つかず単純に錆に対して長持ちします。
穴掘り機(3000円~8000円程)を使用すると、耕作地など掘りやすい土地ではハンマーを使用した杭打ちより簡単に単管を設置することができます。
3.穴を少し掘ってから杭打ちする
地中20cm程まで掘り、そこから単管杭を杭打ちして掘った分を埋め戻します。穴掘り機を使用する程の効果はありませんが、特に錆びやすい地中の浅い部分の防錆皮膜が傷つかないことで錆に対して長持ちします。
追加で錆止めを行う場合、防錆塗料を地表との境界となる部分の上下各20cm程度に重ね塗りを行ってから埋め戻します。
単管杭の錆止め方法
単管杭の錆止めでは地中の浅い部分から地表の境界部分(地上から高さ10cm程まで)を重点的に錆止めを行います。
単管杭の深さが予めはっきりしている場合、地表との境界となる部分の上下各20cm程度を防錆塗料で重ね塗りしておきます。
但し、先に防錆塗料を塗って杭打ちを行うと土と擦れて防錆塗料が剥がれて効果が無くなります。杭打ちを行う場合、杭打ち後に地表との境界となる部分の上下各20cm程度に防錆塗料を重ね塗りします。
防錆塗料
単管杭に使用する防錆塗料の一例では、亜鉛末を主成分とするジンクリッチペイント(ジンクリッチスプレー、常温亜鉛めっき「ローバル」など)を使用します。
「ローバル」などの亜鉛粉を主成分とする防錆塗料は、単管パイプ溶融亜鉛メッキと見た目が大きく変わらず比較的目立たずに重ね塗りすることが出来ます。(但し塗料部分はツヤがないため、ツヤ有り・無しという意味では目立ちます。)
この他、錆なければ何でも良いので防錆テープや樹脂塗料など見た目と期待する耐用年数を考慮して使用します。
単管杭
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・打込み先端と打込座金
単管パイプに組合せ(後付け)て使用する先端パーツと打込座金(各200円程度)。
手元にある単管パイプを杭として手軽に利用することができ、両手ハンマーさえあれば杭打ちすることが出来ます。 -
・単管杭
1本ものの専用の単管杭。
パイプ部が肉厚で丈夫。溶融亜鉛メッキの中でも防錆皮膜が厚く処理され、通常の単管より錆に強くなっています。 -
・単管パイプベース 沓石(くついし)
単管パイプ用の土台の沓石(約2,000円)で約25kgです。地上での据え置きや地上約10cm残して地中に埋め、単管パイプを差して隙間や周囲をコンクリートで固めることで錆に強く、頑丈な基礎部分を作ることが出来ます。 -
・単管パイプベース 束石(つかいし)
単管パイプ用の土台。コンクリートピンコロ(約700円)と呼ばれる束石(つかいし)で約10kgです。見栄えの良い沓石より安価で、主に地中や床下となる見えない箇所の土台などに使用できます。地中に埋め単管パイプを差して隙間や周囲をコンクリートで固めることで錆に強く、頑丈な基礎部分を作ることが出来ます。 -
・インスタントセメント
単管杭の地中や地上約10cmまでを固めるコンクリートと使用するインスタントセメントです。水を混ぜるだけで簡単に使用することができ10kg辺り約800円程です。強いアルカリ性で、コンクリートに覆われた単管等の鉄は錆が抑制されます。 -
・ローバル(赤い缶)の防錆塗料
単管パイプの亜鉛メッキ同系統となる亜鉛末を主成分とする防錆塗料の「ローバル」です。塗って乾くと、ツヤのないコンクリートのような灰色となります。
・防錆の継続
地中の浅い部分から地表の境界部分(地上から高さ10cm程まで)は水分や土壌の塩分により、徐々に防錆皮膜が消費されて皮膜が薄くなります。恒久的に防錆を行うためには定期的(ローバルを使用して3~5年程度。状態が良ければ最長で10年程)に防錆塗料の塗り直しが必要となります。
既に錆が発生している場合には、錆を金属ブラシやサンドメーパーで落とし、清掃して防錆塗料を塗ります。
錆が発生していなければゴミを落として防錆塗料を重ね塗りします。
地中部分の塗り直しは現実的ではないため、基本的に地表の境界部分(地上から高さ15cm程まで)に対して行い、地中部分が腐食した場合には寿命と考えた方が良いかと思います。
地中部分を錆びさせたくないのではあれば施工時にコンクリートで固めるか、定期的に単管杭を抜いてメンテナンスや交換をする。周囲を掘り防錆処理をするなどの必要があります。
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