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- グリスの注油では、複数の種類を混ぜないことが基本です。しかし、使用するグリスを間違える。元々使用されていたグリスの種類が解らないなど、意図せずに異なる種類のグリスを混ぜてしまう場合があります。
グリスが混ざった影響
単にグリスが混ざるといっても、混ぜたグリスの種類により、混ざることで影響がある場合と、影響がない(問題が少ない)場合があります。混ぜたときの影響は、グリスの増ちょう剤の種類で分類されます。まず混合表を確認し、自分が混ぜたグリスについて大きな問題がありそうか確認します。・グリス混合における混合表
増ちょう剤の種類 カルシウム アルミ リチウム ウレア カルシウム石けん(一般的なシャーシグリス) ○ △ △ ○ アルミニウム石けん △ ○ × △ リチウム石けん(一般的なリチウムグリス)(マルチパーパスグリス) △ × ○ △ ウレア(ウレアグリス) ○ △ △ ○
△ 場合によって問題がある(グリスが変化(変質)し、凝固や液化により性能が発揮されない場合がある)
× 問題あり(グリスの変質により、本来の機能を失う)
私が使用しているエーゼットのグリスの場合
・シャーシグリス⇒カルシウム石けん
・リチウムグリス⇒リチウム石けん
・モリブデングリス⇒リチウム石けん
モリブデンは、リチウムグリスに二硫化モリブデンを配合しているためリチウムの分類となります。使用するグリスのパッケージに記載された増ちょう剤の種類を確認してください。
グリスが混ざったときの対処方法
異なるグリスが混ざり、その影響が大きく懸念される場合に最も良いのはオーバーホール(分解洗浄)を行い、新しいグリスを使用しなおすことです。しかし、これには機械の知識や、労力が大きく必要となり素人にとって現実的ではありません。このため、一部の箇所を除き通常は新しいグリスにより古いグリスを押し出す方法で問題の対処を行います。
・グリスを押し出す方法
グリスを注入したとき、入れすぎたグリスがハンドルが重くなる等の抵抗もなくはみ出て来る経験をしたことがあると思います
このようなグリスが押し出される構造の箇所では、単純に新しいグリスを注入し、はみ出すグリスが古いグリスから新しいグリスが出てくるまで注入することで容易にグリスの入れ替えを行うことが出来ます。
・グリスを押し出して入れ替えれない箇所
グリスが密閉されている箇所では、内部にグリスを密閉するためのシールによりグリスが漏れでないようになっています。無理にグリスを押し込んでも内圧が高くなり、正常な動作を妨げ発熱等の原因になります。このような箇所では、分解洗浄を行う必要があります
主な例)
密閉型ベアリングなど。トラクターのロータリー。クローラ(キャタピラ)等。機械の取扱説明書のグリス注入時の注意に、「ハンドルが重くなったら」または、「グリスが出てきたら直ちに注入を止める事」と明記されている箇所です。
・この他
グリスが混ざったときの影響は、混ぜたときの量も関係してきます。
高性能・精密な機械を除き、農業機械では一度異なるグリスの種類を混ぜたからといって直ちに故障の原因となることは稀なことです。使うたびにグリスが種類異なると言ったことがないよう、使用する箇所のグリスを統一しておきます。
また、安価なスプレーグリスの多くはリチウムグリスです。グリスガンによるグリス注油と、スプレーグリスの注油を併用し、近い場所に其々を使用する場合、グリスガンのグリスをリチウムグリスに統一しておくと便利です。